新星印刷 SHINSEI PRINT
2023
デジタルシフトが加速する中で印刷会社に求められる役割はなにか。紙からデジタルへ、平面[2D]から立体[3D]へ。技術主導のパラダイムシフトが叫ばれる状況下にこそ源流の点検が欠かせない。新たな流れに適応する以前に、各時代・各現場で多様なコミュニケーションを支えてきた印刷行為や媒体本来の価値を見つめ直す。
大正時代に創業し、業務印刷から商業・デザイン印刷まで幅広く手がけてきた新星印刷株式会社の事業再構築にあたり、パーパス[ 存在意義 ]やビジョンの再設計、コミュニケーションツール[ ロゴ・名刺・掛け物 ]のデザイン制作を担当した。
大正時代に創業し、業務印刷から商業・デザイン印刷まで幅広く手がけてきた新星印刷株式会社の事業再構築にあたり、パーパス[ 存在意義 ]やビジョンの再設計、コミュニケーションツール[ ロゴ・名刺・掛け物 ]のデザイン制作を担当した。
01
なまえに隠れた物語をひもとく
まず、戦後に改名された現在のコーポレートネーム[ 新星印刷 ]が社内で形骸化している状況を踏まえ、ネーム自体は引き継いだまま、新たなコンセプトとしての物語を創出した。天体現象である「新星爆発」の発生原理として、連なる二つの星が相互に作用し合うことで、一方の星が存在を輝かせるように光を放つさまに着目。その現象とパートナーの潜在的な価値を引き出す印刷行為を詩的に重ね、ネームコンセプト[ 連なる星の、かがやくかたち ]に昇華した。
02
触感[ ふれる ]をつくる業態へ
鉄道現場といった特殊な環境における印刷物の制作を担っていた同社には、印刷物で現場のヒトやモノを動かす意識が備わっていた。その意識はデザイン印刷においても、デザイナーの熱量を質量として保存したまま現場で発現させるための印刷姿勢に現れていた。印刷物に「ふれる」瞬間のエネルギーを最大化させる意識的・技術的アプローチは、デジタル技術との連携を図っていく未来においても”変わらぬ価値”として重要になることを踏まえ、印刷技術の哲学として「ふれる」の概念を拡張するビジョンを策定した。
03
わたしの多面性にふれるための名刺
データでの保存が主流となった名刺の現状を踏まえ、新ビジョン「ふれるをつくる」を具体化する取り組みとして自社の名刺を創作。新星爆発をテーマに、紙への愛を爆発させた「成分表」としての自己紹介、「新星がうまれる瞬間」を社員一人ひとりが私的に解釈した画、紙のお香を使った「燃え香る名刺」などの機能をセットした。名刺に文字・写真・火煙・香りといった触感を多面的につくり、名刺コミュニケーションの濃度を高めることを狙った。
04
日常的な実験装置としての掛け物
パーパスやビジョンを社内に浸透させるためには、社員が日常的にそれに触れるだけではなく、みずから解釈または表現できる機会を用意しておく必要がある。社内の各スペースに小さな編集装置として三層構造の掛け物を制作し、時節や来客ごとに画の室礼を変化させるすることで、パーパスやビジョン、パートナーに対する思いなどを様々な形で表現・伝達する環境を整えた。
Members
Design Team
- Producer
- Keisuke Saeki
- Designer
- Sakura Ito
- Copywriter
- Keisuke Saeki