月面極地探査実験A
2022
大気圏を飛び出して宇宙空間から地球を眺める。その経験のある宇宙飛行士はそれぞれの言葉で「地球が一つであること」を語ってきた。誰もが宇宙旅行に出かける時代が到来するかどうかは別として、日本人が得意とする「見立て」 の心と、現実を拡張する「テクノロジー」を大胆に組み合わせれば、そのような体験を身近に引き寄せることができる時代は来ている。
XR 技術を用いて宇宙体験コンテンツを制作する技術者集団 amulapo Inc.による鳥取砂丘を月面に見立てた「宇宙飛行士エンターテイメント」。その初期開発に総合プロデューサーとして参画し、コンセプトメイキングから体験プロトタイプの設計、キービジュアルデザイン、WEB デザイン、オブジェ制作などを担当した。
XR 技術を用いて宇宙体験コンテンツを制作する技術者集団 amulapo Inc.による鳥取砂丘を月面に見立てた「宇宙飛行士エンターテイメント」。その初期開発に総合プロデューサーとして参画し、コンセプトメイキングから体験プロトタイプの設計、キービジュアルデザイン、WEB デザイン、オブジェ制作などを担当した。
01
宇宙飛行士として砂丘を探査する
プロジェクトは舞台となる鳥取砂丘のフィールドワークからはじまる。朝・昼・夜さまざまな時間帯に砂丘に赴き、まるで宇宙飛行士のように環境を調査する。砂質、砂紋、起伏、岩石、冷気、クレーターのような穴、不時着した人工衛星の残骸のような塵。月面との類似点や砂丘ならではの特徴点を景観・物質・地質レベルで採集した。この過程を経ることで、砂丘も月面も限られた資源しか存在しない「有限世界」という共通項を発見した。
02
日常とは異質なところに体験価値は宿る
一面に拡がる砂世界に岩が鎮座し、地下には氷が眠る。月面はまるで広大な枯山水のようであり、限られた資源しか見当たらない。また、宇宙空間ではいつ何が起こるかを予測することが難しい。そんな有限で不安定な環境下では、頭と身体を同時に動かしながら周囲を見渡す必要がある。この「能動性」が求められる状況をエンターテイメントに昇華し、受動的になりがちな日常生活とは異質な体験の場として「月面の砂丘」をひらく。「有限世界」「不安定さ」「実験」などをキーワードに体験型エンターテイメントのコンセプトやビジュアルを作りあげた。
03
「あたかも」を「あいまい」につくる
WEB サイト上では砂丘で採集した素材をブリコラージュし、「あたかも」⽉⾯な世界を砂丘という現実の上に「あいまい」な界⾯として表現。体験に使⽤するオブジェクトは、砂丘海岸に漂流した海洋ゴミから制作。例えば、軍艦旗は⽉⾯の着陸地点に⽴てる旗に、巨⼤なタンクは⽔の電気分解装置機にアップサイクル。国⽴公園に指定される⿃取砂丘の環境の利活用と保護を両立する視点と、宇宙⾶⾏⼠が⽉⾯で⾏うミッションを体験に落とし込む視点をもって、砂丘に転がるゴミのアフォーダンス(※1)を発⾒し、体験コンテンツを構成した。
※1) アフォーダンス(affordance)…物が持つ形や色、材質などがその物自体の扱い方を説明しているという考え方
※1) アフォーダンス(affordance)…物が持つ形や色、材質などがその物自体の扱い方を説明しているという考え方
04
原始的な感覚を先端的に取り戻す
体験は⽉⾯の厳しい環境に近い冬夜の⿃取砂丘(氷点下)で実施。⽬の前の⿃取砂丘を⽉⾯世界に変換するテクノロジーには眼鏡型スマートARグラス(Google / Nreal Light )が起⽤され、⾃由になった両⼿を使って被験者自らアクションを⾏うことが可能になった。例えば、氷を割る、砂をすくう、といったミッションを与え、そのアクションをシグナルにARグラス上に関連コンテンツが連動する設計を施した。これは⽉⾯探査というSF的な状況で、原始的でアナログな⾏為をあえて要求することにより、⽣命活動に必要なものを⾃ら調達する必要性が低くなった現代社会で鈍った感覚を取り戻すことを期待したものである。
05
「解釈の宇宙」をつくる
これまで観光を⽬的とした来訪が多かった⿃取砂丘に、「明⽇⽉⾯に出かける」という⽂脈ができる。この新しい旅の⾼揚感を活⽤し、被験者には事前課題を与えた。⽉に出発する前の⾷事(1品)や⽉に持っていきたいもの(1kg以内)を事前にセレクトし、会場に持ち込んでもらうことで⾃⾝や他者の価値観にふれる機会を創出した。「月面」という地球を振り返ることができる場所(メディア)だからこそ生まれる視点や対話を歓迎した。
Members
amulapo Inc.
- CEO
- Katsuaki Tanaka
- COO
- Ko Matsuhiro
- Intern member
- Akira Hatakeyama
- Intern member
- Chiharu Miyoshi
- Intern member
- Nene Kobayashi
- Intern member
- Shogo Shimbo
- Intern member
- Takashi Nakajima
Moon Design Team
- Total Director
- Keisuke Saeki / 星ノ⿃通信舎
- Art Director
- Sakura Ito / 星ノ⿃通信舎
- Experiment Design
- 星ノ⿃通信舎
- Photographer
- Ami Harita
- Copywriter
- Keisuke Saeki / 星ノ⿃通信舎
- Illustrator
- Yoji Takamoto
- Corder
- Takuya Minakuchi
- Special Thanks
- Rikiya Oyama